

INTRODUCTION
女だけが暮らす男子禁制の山奥の集落を舞台に、監督自身の過去の体験に根ざした母と娘の物語を描いた本作は、大阪アジアン映画祭2018でJAPAN CUTS Awardを受賞。北米最大の日本映画祭であるニューヨークのJAPAN CUTSに招待され、独特の感性と映像美によって支えられる世界観は海外レビューでも高い評価を獲得した。
本作は、映画やCMの演出や制作に加え、中川龍太郎監督の『四月の永い夢』では主人公の部屋のデザインとその装飾を担当するなど、独特のキャリアを築いてきた速水萌巴監督の長編デビュー作。本作では監督だけでなく、美術・衣装も担当し、美しい映像世界を構築した。
その瑞々しさで劇中の女性人類学者も魅了するヒロイン・奇稲<クシナ>には、撮影数日前に作品撮りの1枚の写真が奇跡的に監督の目に留まり、本作が映画デビューとなった郁美カデール。14歳の時にクシナを生んだ28歳の母・鹿宮<カグウ>には、ラストの表情で監督を泣かせた個性派女優・廣田朋菜。男の後輩と共に閉ざされた共同体に足を踏み入れる人類学者・蒼子に、均等にバランスのとれた美しい顔が歪な世界に足を踏み入れる現代女性の象徴としてぴったりとキャスティングされた稲本弥生。村長である、カグウの母・鬼熊<オニクマ>には、強さと母性の両方を兼ね備える小野みゆきと、各世代のミューズが集結。
速水監督は、物語が自身と母親とのものに近すぎるという理由で2年前に1度は断った配給のオファーを、本年になって勇気を出して快諾。2年の時を経て、幻の映画が、今ベールを脱ぐ!
STORY
深い山奥に人知れず存在する、女だけの"男子禁制"の村。村長である鬼熊<オニクマ>(小野みゆき)のみが、山を下りて、収穫した大麻を売り、村の女達が必要な品々を買って来ることで、28歳となった娘の鹿宮<カグウ>(廣田朋菜)と14歳のその娘・奇稲<クシナ>(郁美カデール)ら女達を守っていた。
閉鎖的なコミュニティにはそこに根付いた強さや信仰があり、その元で暮らす人々を記録することで人間が美しいと証明したいと何度も山を探索してきた人類学者の風野蒼子(稲本弥生)と後輩・原田恵太(小沼傑)が、ある日、村を探し当てる。
鬼熊<オニクマ>が、下山するための食糧の準備が整うまで2人の滞在を許したことで、それぞれが決断を迫られていく。

CAST
奇稲<クシナ>役
2006年7月8日生まれ。神奈川県出身。
郁美カデール
2012年6歳からモデルデビュー。小学館「ぷっちぐみ」専属モデルを4年間務めたのちTVCM、PVにも出演。2018年には映画『クシナ』で主演として女優デビュー。2019年にモデル・女優の土屋アンナに直接スカウトされ前事務所に所属。現在はショーを中心に活動の場を広げている。鹿宮<カグウ>役
1987年5月14日生まれ、東京都出身。
廣田朋菜
映画主演作には、PFFアワード2011入選作『チョッキン堪忍袋』(2011/天野千尋監督)、『タカノの匂い』(2013/山岡大祐監督)、第48回 モントリオール・ヌーボー・シネマ、第15回大阪アジアン映画祭正式出品作品 『VIDEOPHOBIA』(2019/宮崎大祐監督)がある。その他、ドラマや舞台、MVにも出演。風野蒼子役
1984年3月22日生まれ。宮崎県出身。
稲本弥生
ソニー主催の発掘オーディションで2万人の中から選ばれ、15歳で上京。数々のCM、舞台、映画などに出演。現在は、女優、モデル業の他にArt、Fashionの企画製造をおこなう有限会社トライヴェンティの代表を務める。原田恵太役
1988年5月16日生まれ。東京都出身。
小沼傑
高校を卒業後、文化服装学院ファッション高度専門士科で4年間学ぶ。その後、自分自身を別の物に創るということに興味を覚え役者を志す。映画出演作に『予告犯』(2015/中村義洋監督)、『サバイバルファミリー』(2017/矢口史靖)などがある。鬼熊<オニクマ>役
1959年11月17日生まれ。静岡県出身。
小野みゆき
1979年、資生堂 サマーキャンペーン「ナツコの夏 」でデビュー。主な出演作に『トラック野郎 熱風5000キロ』(監督:鈴木則文)、『戦国自衛隊』(監督:斉藤耕正)、『あぶない刑事』(監督 :長谷部安春)、『ブラック・レイン』(監督:リドリー・スコット)、『ハサミ男』(監督:池田敏春)などがある。
STAFF
監督

速水萌巴
Moët HAYAMI
立命館大学映像学部卒業後、早稲田大学大学院へ進学。在学中から映画やCMの現場で働き始める。助監督を務めた映画『西北西』(中村拓朗監督)は、釜山国際映画祭ニューカレンツ部門、JAPAN CUTSにて上映される。また、主人公の部屋のデザイン・装飾を担当した映画『四月の永い夢』(中川龍太郎監督)はモスクワ国際映画祭で批評家賞を受賞。本作で長編監督デビュー。
監督インタビュー
- Q.本作に手応えを感じたのはどのタイミングですか?
2日目にラストシーンを撮らなくてはいけなかったんですが、水辺のカグウのラストの表情を見ている時に私、泣いちゃったんです。『クシナ』はインディペンデントでやる内容としては挑戦的だったと思います。撮る前から「失敗するようなことはやめた方がいい」「これはアニメでやることだよね」という意見ももらっていたので、スタッフやキャストに泥を塗るようなことはあってはならないですし、そもそも作品が成立するかどうかのプレッシャーをずっと感じていました。そのラストカットが撮れた瞬間に、自分らしい意志を貫いてよかったと気持ちが温まりました。
- Q.「リップグロスやマニキュアが欲しい」と言う女性がいるなど、想像と違った村でしたが、何か参考にした村はあるのでしょうか?
撮る上で調べることはしました。中国に母系制度の摩梭人(モソ人)がいて、女性しか住んでいなくて、男性は通い婚のように夜やって来るそうです。その村には夫や父親という概念がないんです。 女性が身なりを整えるのって男性に対してのアピールという部分もあるとは思うんですけれど、男性が排除されていたとしても、女性だけの価値観の中で美しくいるっていうことを女性にはしてほしいっていう私の願望でもあり、きっとするだろうなという意思表示です。
- Q.読者の方にメッセージをお願いします。
私は物語の力を信じています。それは教訓を教えるために使われてきたものですが、人生を彩り豊かにして、時には守ってくれるのは、物語る力を持っていることにあると思うんです。本作はすごく個人的な映画で、2年前にも配給の話をもらっていたのですが、あまりにもこの物語が自分のものに近すぎて映画祭以外での上映はやめようと思っていました。時間が経ち、この映画の存在自体が私の中で物語化されてきたこともありますが、公開すると決めたのはすごく勇気が要ることでした。私の身を削ってでも物語ることの歓びだとか美しさだとかが伝わればいいなと思いますので、ぜひ劇場へ足を運び作品に触れてほしいです。お会いできるのを楽しみにしています。
撮影

村松良
RYO MURAMATSU
栃木県出身
2013年日本大学芸術学部映画学科撮影録音コース卒業
2013年12月TTR-crankにて機材研修生となり機材を学ぶ。
2014年12月からフリーの撮影部として映画.ドラマ.CM.MVの現場で活動を始める。
撮影担当作品に中川龍太郎監督映画「蒲田哀歌」(20)、MV「URBAN SENTO(JAPAN MADE PROJECT TOKYO) イメージソング 「新しい光」 (20)、MV DISH// 「SAUNA SONG」(20)などがある。
照明

平野礼
REI HIRANO
愛知県出身。
東京藝術大学大学院映像研究科撮影照明領域修了。
フリーランスとして活躍中。
主に撮影を担当することが多いのだが、撮影技術の向上を狙って今回は照明部として現場に参加。
撮影担当作に中川龍太郎監督『四月の永い夢』(18)、『わたしは光をにぎっている』(19)、今野恭成監督『岡野教授の南極生物譚』(20)などがある。
THEATER
地域 | 劇場 | 電話番号 | 公開日 |
---|---|---|---|
東京 | アップリンク渋谷 | 03 -6825 -5503 |
7月24日(金)~9月3日(木) |
東京 | キノシネマ立川高島屋S.C.館 | 042 -512 -5162 |
9月25日(金)〜10月8日(木) |
神奈川 | 横浜シネマ・ジャック&ベティ | 045 -243 -9800 |
2月13日(土)〜26日(金) |
神奈川 | あつぎのえいがかんkiki | 046 -240 -0600 |
9月5日(土)〜18日(金) |
愛知 | シネマスコーレ | 052 -452 -6036 |
8月29日(土)〜9月4日(金) |
愛知 | 刈谷日劇 | 0566 -23 -0624 |
8月28日(金)〜9月10日(木) |
大阪 | シネ・ヌーヴォ | 06 -6582 -1416 |
11月21日(土)〜12月4日(金) |
京都 | アップリンク京都 | 075 -600 -7890 |
11月20日(金)〜25日(水) |
兵庫 | 元町映画館 | 078 -366 -2636 |
3月27日(土)〜4月2日(金) |
岡山 | 岡山メルパ | 086 -221 -0122 |
8月14日(金)〜27日(木) |
福岡 | キノシネマ天神 | 092 -406 -7805 |
10月16日(金)〜29日(木) |
COMMENT
順不同・敬称略
ひとつ間違えると現実感を失ってしまいそうな人物設定と環境設定。だが、そこで生きる女たちの圧倒的な威厳が、物語に説得力とリアリティを付与していく。大器というほかない新人監督が誕生した。
暉峻創三
大阪アジアン映画祭プログラミングディレクター
美しさ、危険、リスクを全て受け入れ、異世界を想像することに挑戦している。新鮮な視点かつ大胆な選択でいっぱいの日本の自主映画の将来を期待させる魅力的な作品だ。
JAPAN CUTS
北米最大の日本映画祭
ファンタスティックな映画だが、幻想ではない。舞台は遠い山奥だが、身近に、リアルに感じる。謎の多い物語が多くのことについて考えさせる:人間の絆としがらみ、愛と支配、文明の不自由と開放の可能性。大胆な、勇気のある美しい映画です。
ジャン ユンカーマン
映画監督
映画が終わってからも、自分の意識がまだあの奇妙な世界を彷徨っている様な心地でした。自然を映した画からも、そこに佇む人間たちからも、奥に眠る何かが香ってくる、美しい映画でした。
岡山天音
俳優
「こんな村は嫌だ」「どんな村?」って言う大喜利の答えみたいな映画。しかし閉塞感から生まれる「美」を教えられた。
吉田恵輔
映画監督